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信田泰宏氏(パワーリフター)にとってのHigh Performanceとは

Updated: Sep 4, 2020

アスリートにとってのハイパフォーマンスとは。第2回目の今回は、パワーリフターの信田泰宏氏にお話しを伺いました。



パワーリフター信田泰宏氏とは

まずは、信田泰宏氏のプロフィールを簡単にご紹介します。


パワーリフティング

HALEO契約アスリート


2014

アジアオセアニアクラシックベンチプレス選手権男子 一般83kg級 優勝


2016

ジャパンクラシックパワーリフティング選手権男子一般83kg級 2位

ジャパンクラシックベンチプレス選手権男子 一般83kg級 優勝


2017

世界クラシックベンチプレス選手権 一般83kg級 3位

ジャパンクラシックベンチプレス選手権 一般83kg級 優勝

ジャパンクラシックパワーリフティング選手権 一般83kg級 3位

東京大会 優勝(日本記録タイになるTL717.5kgを樹立)


2019 茨城国体 優勝

ラグビー〜パワーリフティングへ



線の細いラグビー選手からベンチプレッサーへ

小中高大学と一貫してラグビーをしていました。ポジションはウィングで大学当時でも

70kg前後の線の細い、フィジカルは強くない選手でした。


大学卒業後は都庁に勤め、ラグビーを引退した燃え尽きを埋めるため、また体が小さいこ

とを克服するためにボディビルやフィジークに挑戦しました。


その中で自分が筋力は比較的強いことと、ウェイトトレーニングの記録がどんどん更新していく楽しみにはまり、ベンチプレッサーとして競技に取り組み始めました。


その後ベンチプレッサーとしてはある程度やりきったと感じ、ベンチプレス、スクワット、デットリフト3種の総挙上重量を競うパワーリフティングの世界に転向しました。


再びラグビートップリーグへのチャレンジ

ベンチプレッサーとして競技に取り組んでいた27歳の時に、ふと筋力が強くなった今の

自分がどれくらいラグビー競技の中で通用するのか?と思い立ち、当時開催されたトップ

リーグチャレンジ(トライアウト)に挑戦しました。


その時はちょうど日本代表として世界大会出場の直前でした。体重は83kg前後でベンチプレスが200kgオーバー、スクワット200kg、デットリフトは230kg程度でした。まだベンチプレッサーだったのでスクワット、デットリフトはそれほど強くなかったものの、その当時トップリーグへの入団が決まっている選手たちとのプレーしてみて、大学当時より数段高いレベルでパフォーマンスできたことに驚きました。具体的にはコンタクトプレーがまったく違いました。


もちろんラグビーの練習はほとんどしていなかったので、アジリティやハンドリングスキルはダメですが、一対一のディフェンスでは思った以上にフィジカル的な優位を活かせた良い

プレーができました。


特に短い距離のスプリントの1、2歩目の速さは70kg以下だった現役時代よりも数段早いイメージで動けました。


改めてラグビーなどスポーツパフォーマンスには筋力が大事な要素だと実感できた貴重な体験でした。


隙のない、面白くない選手がハイパフォーマンス

パワーリフティングという競技でのハイパフォーマンスは、シンプルにベンチプレス、ス

クワット、デットリフトの挙上トータール重量が重いことです。

私自身はどの種目も満遍なく強く、弱点もなく、隙のない選手になれるように心がけています。

ボディビルダーの優勝する選手が、バランスよくある意味面白くない身体をしていると言われることと少し似ているかもしれません。ハイレベルで隙のない選手になるために、栄養やトレーニングを考え取り組んでいます。


そのためにどの種目においても共通して大切にしていることは、怪我をしないでトレーニ

ングを積み重ねることです。そのためにウォームアップやアクティベーション(筋肉の活

性化)、ケア、栄養と休養をしっかり考えて取り組みます。


パワーリフティングは非常にシンプルな動作の反復になるので、毎回同じフォームで反復

練習できることが重要になります。

フォームに悪い癖がつかないように、常に同じ質のフォームで反復して量をこなす必要があります。悪い癖のついたフォームを反復することで迷走し、そこから怪我につながることが多いのです。


その毎回安定したフォームで反復できる状態ができて、次に強度=重量設定を考えます。重量設定については、決して見栄を張らず、フォームの質を妥協しない前提でチャレンジします。


フォームの質を高めるための準備=アクティベーションと補強エクササイズ

ベンチプレス編

ベンチプレスに関しては、適切なブリッジ姿勢が作れることと、前肩にならないように、

肩甲骨を寄せる背中の筋肉と、肋骨と胸椎胸郭に対するアクティベーションやリポジショ

ニングを徹底的にウォームアップとして約30分間実施します。

具体的にはキューバンプレス、バンドプルアパート、肋骨に対するフロッシングなどを行います。


また一般的なパワーリフターはあまり行わないようですが、ベンチプレスの後に、ロウイ

ングなどの上半身プル系ストレングスエクササイズを1時間程度時間かけて行います。

事前にやるアクティベーションもほぼプル系エクササイズで、後に行うストレングスエクサ

サイズを合わせるとだいたい90分間なので、プッシュ系種目であるベンチプレスに対し

て、プル系種目は1.5倍程度時間をかけることで、プッシュ/プルのバランスを保ちます。


この押し引きの筋力バランスが崩れて、押す筋力に偏ると肩の怪我につながります。

他の種目でも共通ですが、怪我をすることはパフォーマンスの伸び代を削ってしまうことになるので、怪我の予防に細心の注意を払うことがパフォーマンス向上につながると考えてい

ます。



スクワット編

パワーリフティングでは重い重量を挙げられる絶対的な筋力が大事で、そのためには一箇

所に頼って負荷がかからないフォームを作らなくてはいけません。

スクワットやデットリフトでいうと、背中、尻、脚といった大きな筋肉全体で挙げることを心がけます。


ボディビルトレーニングと大きく違うのが、一部位に効く感覚があってはならず、脊柱に

疲労がたまらないフォームを追求します。

その中で大臀筋や中臀筋といったお尻の筋肉は、股関節のトルクとして最大で主役になってほしい部位であり、またとても使いづらい筋肉なので、しっかりアクティベートするようにしています。


またスクワット、デットリフトの後にもベンチプレス同様に補助種目に取り組み、ハム、尻、大腿四頭筋などもしっかり鍛えてバランス取るようにしています。



メイントレーニングと目標

以上のようにウォームアップでしっかり筋肉をアクティベートしてから、メインのリフテ

ィングに入りますが、リフティング種目では試合の制限に合わせてウォームアップ3〜4

セットでメインセットに入り、3〜5セット実施します。


繰り返しになりますが、重量設定はフォームの質を犠牲にしない範囲でチャレンジして、バーベルの挙上スピードも気にするようにし、デバイスとスマフォを使ってモニタリングしながら、感覚と数値を擦り合わせながら調整しています。


現時点での目標は総重量850kgでの日本一です。

この重量を挙げれば全階級通じた絶対重量での日本一になるはずです。具体的にはスクワット320kg(現在287.5kg)、デットリフト320kg(現在280kg)、ベンチプレス230kg(222kg)が目標値です。

それが目指す「隙のない選手」になるための条件ですね。


リカバリー:フロッシングと炭水化物

質の高いトレーニングのためのリカバリーとして重視して取り組んでいるのは、フロッシ

ングです。

フロッシングには筋膜リリース、可動域、筋力、回復を促進する効果がありますが、特に最新の筋膜研究によると皮膚の感覚受容器のリセットによる痛みのコントロールや、間質液のヒアルロン酸が高強度運動によってゲル化した状態から液化させる効果があり、疲労回復を促進させると考えられています。


間質液がゲル化した粘性の高い状態だと、筋膜が滑らず動きを悪くするだけでなく、打撲のように筋膜が癒着や、繊維化してトリガーポイントを作ってしまいます。


フロッシングの圧迫状態で筋を動かすことで、ハイドロリリースされ、その悪循環を防ぐことができます。私はトレーニングによる直後の炎症反応への体のポジティブな反応を最大限に生かしたいので、フロッシングは直後でなく、帰宅後の就寝前に行なっています。



リカバリー:炭水化物、抗酸化栄養素、腸内環境

栄養に関してはとにかく、高負荷のトレーニングに見合ったエネルギー源を確保するため

に、炭水化物を多く取ることを重視しています。


1日体重1kgあたり6gの炭水化物を取ることを目標としています。もともと少食なため、とても苦労していて工夫もしています。


こまめに補食回数を増やすことはもちろん、「食べられないなら、飲め!」をモットーに

、超ハイカーボスムージーを作って飲んでいます。


また腸内環境を良好に保つことも重視しています。

プロバイオテックス(腸内細菌、微生物)としてヨーグルやイヌリン、フルーツなどから良質な食物繊維を摂るようにしています。


腸内細菌の一つである酪酸菌がつくる酪酸は大腸内のエネルギー源で、酪酸が機能するこ

とで体全体の代謝のスイッチがあがり、ハイパフォーマンスの大前提と考えています。


もちろんトレーニングによる炎症状態からの回復に、抗酸化物質もとりますが、フロッシ

ングと同様に、ポジティブな抗炎症反応を打ち消さないよう、トレーニング直後でなく、

就寝前に摂るようにしています。



研究と実践現場の橋渡し

パワーリフティングを始めた頃は、もちろん実績もなく無名でした。

その時自分がトップレベルになるためにできることは何かと考えて、しっかりトレーニングすることはもちろん、トレーニングの知識に関してトップレベルになろうと、専門書や研究論文などを読み漁りました。

そしてそれをSNSで投稿しているうちに、周りに本物の研究者たちが集まってきて、活発な議論のコミュニティが出来上がりました。

そこで餅は餅屋ということで、私はその本物の研究者の方々と、パワーリフティング実践の現場の橋渡し的な活動へと徐々に移行してきました。


研究者の知見を、私が実践してフィードバックすることや、実際に研究実験へ被験者グループを紹介したこともあります。

今では私自身のハイパフォーマンス実現を知識の面からサポートしてくれる頼もしい存在です。


パワーリフティングはBIG3(スクワット、デットリフト、ベンチプレス)で重い重量を挙

げることをつきつめた競技です。

私も関わっていたラグビーだけでなく、あらゆるアスリートにとって、筋力は必要不可欠な体力要素です。


パワーリフティングをつき詰める中で得た知識や経験を共有することで、色々なアスリートやトレーニーの方々の役に立てればとても嬉しいです。


今後もHALEO ZONEを通じてパワーリフティングに関する最先端の情報を発信できればと考えています。



インタビューを終えて


パワーリフティングという挙上総重量を競うシンプルな競技だからこそ、様々な角度から深掘りすることができるのでしょう。特に信田選手の研究と現場のバランスの取れたスマートな取り組みは、最早パワーリフティング道といっても良いでしょう。


信田選手の知識と経験は、多くのアスリートにとってハイパフォーマンス実現のヒントになることは間違いありません。


フロッシング、アクティベーション、腸内環境、炭水化物量、抗酸化物質の摂取タイミングなど気になるキーワードが印象に残ったので、今後それらの関連記事や情報も発信していきたいと思います。


HALEO High Performance Director 村上貴弘



撮影:岩田直子



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